肺組織特異的遺伝子導入モデルによって、新生児の重症呼吸障害の遺伝子治療法を確立することが最終的な目標である。そのための基礎研究として、昨年度病態モデル作製を行い、今年度は病態評価方法を確立した。さらに、免疫組織化学を含めた形態学的評価を行い、肺機能との相関を検討した。 1 新生仔マウスの肺機能評価システムの確立 帝王切開により出生させた低形成肺マウスの呼吸機能を、気道に圧トランスデューサーを接続して、圧-容量曲線を示すことで客観的に評価する方法を確立した。圧トランスデューサーシステムは、慶應義塾大学理工学部と共同する形で、独自のプログラムのものを作製した。 2 perfluorocarbon投与による、低形成肺モデルマウスの呼吸機能改善 nitrofen投与により作製した低形成肺モデルマウスの呼吸機能が、経気道的perfluorocarbon投与によって改善することを、症状経過・組織所見の両面から証明した。 3 新生仔マウス肺の免疫組織化学 免疫組織化学によって新生仔マウス肺のサーファクタント蛋白発現を検討した。低形成肺モデルにおけるサーファクタント蛋白発現はコントロールと差がなく、呼吸不全の原因はサーファクタント蛋白の産生低下では説明できないことを証明した。 化学的・生物学的に不応性であり、呼吸機能を損なわないパーフルオロカーボンは、Cre発現アデノウイルスを気管内投与し、肺組織特異的遺伝子を導入する際の溶媒として有効な可能性を示した。 以上の結果は、2000年に開催されたアメリカ胸部疾患学会で発表した。
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