<はじめに> 臍帯血中には、通常成人・小児末梢血からは分離されない多分化能をもつ造血幹細胞が比較的多く存在しており、臍帯血バンクの設立も各地で始まっている。今回、臍帯血造血幹細胞の性質ならびに各発生段階での幹細胞の反応を明らかにすることを目標として検討した。 <方法と結果> 未熟児臍帯血単核球中CD34陽性幹細胞の割合をflowcytometryで調べ、在胎週数との相関を検討した。各週数の平均は在胎37〜41週が1.5%、在胎33〜36週が2.0%、在胎24〜32週が3.5%と在胎週数が早い程CD34陽性細胞を多く含み、特に在胎29週未満での含有率が高かった。次に、未熟児臍帯血中単核球を用いてcolony-forming assayを行い、どの種類の前駆細胞がより多く含まれているかを検討し、更にcolony-forming assay中に添加するgrowthfacorの濃度を変化させて、正常新生児臍帯血を比較対照として、その反応性の特徴を解析した。collony-forming cell(CFC)、colony-forming units granul ocytema crophage(CFU-GM)、burst-forming units erythr oid(BFU-E)のいずれもが未熟臍帯血に有意に多く含まれていた。growthfactor濃度を変化させてcolony形成の反応に違いが生じるかの検討では、反応の個人差が大きく、分娩方法、分娩状況の違いによってかなりの差があり、一定の傾向は無かった。 <まとめ> 今回の検討で、未熟児の臍帯血には成熟児よりも多くの造血幹細胞が含まれ、各種colonyの形成能力も高いことが確認された。臍帯血バンクの設立が進む中で、未熟児臍帯血がより有効な可能性もあり、今後さらなる検討を重ねていきたい。
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