本研究は、糖尿病性腎症進展・憎悪のメカニズムの一端を明かにし、糖尿病性腎症の予防・治療法の開発のための手がかりを得るため、セロトニンのメサンギウム領域における起源・セロトニン刺激後の細胞内シグナル伝達機構の解析を行ない、糖尿病性腎症の発症・進展におけるセロトニンからIV型コラーゲン産生へ至る経路の意義を明らかにすると共にセロトニン及びIV型コラーゲンと糖尿病性腎症関連を更に究明することを目的とする。本年度は細胞内シグナル伝達とセロトニン受容体阻害剤と糖尿病性腎症の蛋白尿の関連を検討した。 1.セロトニンによるIV型コラーゲン産生における細胞内シグナル伝達機構の解析 ヒトメサンギウム細胞におけるセロトニンによるTGF-β産生へ至るシグナル伝達機構の解析ではセロトニン刺激からPKCが活性化に至る経路を明らかにするために、百日咳毒素を用いて3量体G蛋白質の関与を検討した。G蛋白質の関与が示唆された。一方、TGF-β産生からIV型コラーゲン産生へ至るシグナル伝達機構の解析ではIV型コラーゲン産生に関与するTGF-β受容体サブタイプを検討中である。新たにミトコンドリアにおける酸化ストレスの関与についても検討を加えている。 2.in vivoにおける糖尿病性腎症の発症・進展におけるセロトニンの役割の解析 糖尿病性早期腎症患者の蛋白尿の変化に対するセロトニン2A受容体拮抗阻害剤(塩酸サルポグレラート)の作用を検討し、塩酸サルポグレラート投与により尿中アルブミン排泄を減少させることを認めた。
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