血管形成術後の再狭窄病変などの血管平滑筋細胞(VSMC)の増殖性病変に、アポトーシスが重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。本研究では、NF-kBがVSMCのアポトーシスを制御している可能性に着目し、アデノウイルスベクターを用いた安定型IkBa遣伝子導入によるNF-kBの特異的抑制が、サイトカイン刺激下でのVSMCのアポトーシスとCaspase-3様プロテアーゼの活性化に及ぼす影響を検討した。【方法】NF-kBの制御タンパクであるIkBaの安定体(IkBDN)を発現する非増殖型アデノウイルスベクター(AdexIkBDN)を作製し、Polyethylenimine(PEI)存在下でMOI=10にてVSMCに感染させ、以下の実験を行った。細胞内のIkBaおよびIkBDNの発現をウエスタンブロッテイング法にて、IkBDN強制発現によるNF-kB抑制効果をゲルシフトアッセイおよびルシフェラーゼアッセイにて検討した。次にHoechst-33258染色にてアポトーシス細胞を検出、ELISAにて断片化DNA量を測定し、IkBDN強制発現によるTNF-a刺激下でのアポトーシス誘導効果を検討した。さらに、TNF-a刺激後のCaspase-3およびCaspase-2活性を経時的に測定した。【結果と考察】AdexIkBDNによるIkBDNの発現は、感染6時間後より認められ、48時間以上持続した。またIkBDNは、TNF-a刺激による分解を受けず、NF-kBを特異的かつ強力に抑制した。さらに、TNF-a刺激のみではVSMCのアポトーシスは誘導されなかったが、AdexIkBDN感染により、TNF-a刺激後の著明なアポトーシスとCaspase-3様プロテアーゼの活性化が認められた。一方、IL-1b刺激下ではAdexIkBDN感染によるアポトーシスは誘導されなかった。以上より、VSMCへのIkBDN遺伝子導入は、NF-kBの特異的抑制と、Caspaseカスケードの活性化により、TNF-a依存性のアポトーシスを誘導することが明らかとなった。
|