研究概要 |
<平成11年度>ファイブロネクチン(FN)を産生している癌細胞に対するヘパリンの抗腫瘍効果をin vitroで検討するため以下の実験を施行した。 1)抗FN抗体(IST-1,IST-2,IST-3)を使用し、培養細胞株である大腸癌(LOVO,DLD)、卵巣癌(PA-1)、甲状腺癌(SW)、正常肺細胞(WI-38)、正常血管内皮(huvec)に免疫染色、flowcytometry双方を施行しFNの発現を検討した結果、DLD、WI-38、huvec以外の癌細胞株全てにFNの発現を確認した。 2)細胞株にヘパリンを比例した濃度で添加した後、細胞の接着能、生死をadhesion assay、thymidine incorporate assayにより測定した結果、FNを産生する細胞株で細胞接着能の低下を認めた。 3)FNを産生する細胞株に一定濃度のヘパリンとともにFN結合部位に対する抗体(IST-1,IST-2)、人工的に作成した結合部位と同一のpeptide(C末端,N末端)をそれぞれ別にtitrationして添加し、接着能、生死の変化を同様の方法で測定した結果、前者では接着能の低下、細胞死の促進を認め、後者では細胞死の阻害を認めた。 4)FNを産生する細胞株にヘパリンを添加し、DNA Laddering、Tunel法により細胞染色をそれぞれ施行し、細胞死がアポトーシス、ネクローシスのどちらによるものかを検討した結果、アポトーシスに特徴的なladdering像と細胞染色像を認めた。 以上より、ヘパリンが癌細胞自身の産生するFNのヘパリン結合部位を介し、癌細胞にアポトーシスを誘導し死滅させる抗腫瘍効果を有することが明らかとなった。さらに、ヘパリンによるアポトーシスの誘導経路を明らかにするため、アポトーシスの抑制遺伝子であるbcl-2、誘導遺伝子であるp-53をそれぞれ培養細胞株に導入した後、ヘパリンを添加しDNA Laddering、Tunel法により検討している。
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