研究概要 |
CA19-9抗原(sialyl Lewis a;SAα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc)は大腸癌、膵癌の進展に伴い患者血清中に発現する癌関連糖鎖抗原であり、本抗原の生合成にはβ1,3-ガラクトース転移酵素(β3Gal-T)が必須である。既に4種のβ3Gal-T(β3Gal-T1〜4)がクローン化されているが、Cometitive RT-PCR法を用いてβ3Gal-Tsの発現を各種大腸癌細胞株で定量すると、既存のβ3Gal-Tの発現はCA19-9の発現と一致しない。そこで大腸癌細胞においてCA19-9抗原を合成するβ3Gal-Tは他にも存在すると考え、そのクローニングを行った。既存のβ3GalTsの配列からdegenerate primerを設計し、Colo 205 cDNAでRT-PCRを行い、そのPCR産物をプローブにしてColo 205 cDNA Libraryから新規β3Gal-T(β3GAl-T5)をクローニングした。本酵素の発現量は大腸癌、膵癌株におけるCA19-9の発現量に強く相関しており、また遺伝子導入株のflowcytometry、オリゴ糖を用いた活性測定でβ3-GalT活性が証明され、その活性は他のβ3Gal-Tsよりも顕著に高かった。組織分布をみると胃、小腸、大腸、膵臓、子宮に発現がみられた。発現分布や活性等を考えると、今回、我々がクローニングしたβ3Gal-T5が大腸癌・膵癌においてCA19-9抗原を合成する酵素であると結論した。
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