1.食道癌患者に対して施行した術前放射線化学療法の治療効果判定にフラクタル次元による解析を用いた。食道透視フィルムから癌の壁性状を検出し、フラクタル次元を計算したところ、治療前最大1.251であった数値が治療後1.031まで低下した。一例を示せば、治療効果に対応し、治療前1.186→1.169→1.086治療後1.082のごとくフラクタル次元は変化した。さらに、同一症例に対して、従来の癌取り扱い規約に基づいた縮小率とフラクタル次元の数値変化を比較したところ、前者においては腫瘍の形態によっては測定不可能であったり、験者間におけるデータのばらつきが非常に大きかった。フラクタル次元においては、壁性状の検出が完全にコンピュータ化できれば、非常に客観性のあるデータが得られ、なおかつ鋭敏に治療効果を反映することが判明した。今後、解析の客観性を確立するとともに、様々な画像診断装置と組み合わせることでフラクタル次元解析が、臨床腫瘍学において利用できると考えられた。 2.肝腫瘍については、転移性肝腫瘍のCT画像を用い原発巣が腺癌であるか肉腫であるかの相違点に着目し、フラクタル次元を比較検討した。CTによる肝腫瘍の鑑別診断にフラクタル次元解析が有用か否かの検討を行い、発表準備中である。この研究においては、CT撮影時のデジタルデータをそのまま取り入れることにより、非常に客観性に優れた検討が可能である。
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