低分化腺癌のKATOIII細胞と高分化腺癌のMKN28胃癌細胞株を用い、in vitroで検討した。平底96穴マイクロプレートにRPMI1640培養液とKATOIIIあるいはMKN28細胞を加え、5-FU濃度を0-1000μg/ml、TAM濃度を0-1000ng/mlにして、各濃度におけるTAM単独および5-FU併用下で上記2種の胃癌細胞を37℃、5%CO2条件で3日間培養した。培養終了後4時間前に、細胞増殖試薬のWST-1を20μlずつ分注し、吸光度を測定した。 KATOIIIはTAMにより細胞増殖はdose dependentに抑制された(p<0.01)。5-FU単独と比べ、TAMと5-FUの併用療法で抑制効果が有意に大であった(p<0.05)。一方、MKN28ではTAM単独による抑制効果は認められず(p=0.8)、しかも5-FUと併用すると5-FU単独に比べ、増殖抑制効果を有意に阻害した(p<0.01)。また、KATOIIIはエストラジオール濃度とともに増殖が増強され、MKN28ではエストラジオール濃度とともに増殖は抑制された。この実験結果から、一部の低分化癌では女性ホルモンにより増殖が刺激され、TAM単独あるいは5-FUとの併用で抗腫瘍効果が期待できることが分かった。逆に、ある種の分化型胃癌ではTAMを使用することで抗癌薬の治療効果を下げる危険性があることが示唆された。現在、in vivoにての抗腫瘍効果について検討を加えている。平成12年より女性4型胃癌の患者に対し、十分なインフォームドコンセントの上、TAM併用療法を開始した。
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