研究概要 |
今回,選択的複製能力を有する変異型単純ヘルペスウイルス1型(以下G207)を腫瘍内投与し,腫瘍特異的な免疫を誘導させ,微小肝転移を抑制するin situ腫瘍ワクチン療法をマウス大腸癌肝転移モデルを用いて検討した。 (方法)BALB/cマウス由来大腸癌株CT26を用い3種類の肝転移モデル,i)腫瘍細胞を脾被膜下に注入する経脾肝転移モデル,ii)腫瘍片を盲腸に縫着した同所性移植肝転移モデル,iii)皮下腫瘍を同時作製した経脾肝転移モデルを作製し,G207をi)脾腫瘍内,ii)盲腸腫瘍内,iii)皮下腫瘍内,にそれぞれ投与し肝転移状況(肝移転個数)を評価した。また経脾肝転移モデルにおいてヌードマウスを用い肝転移の状況を比較した。 (結果)経脾肝転移モデルでは,G207投与群に有意な肝転移個数の減少を認めた。(G207投与群:平均転移個数0.8±1.4個。コントロール群:平均転移個数7.1±2.9個。P<0.001)。同所性移植肝転移モデルでは,肝転移個数は抑制される傾向が認められた。(G207:0.1±0.4個。コントロール:3.4±3.6個。P=0.062)。皮下腫瘍同時作製経脾肝転移モデルでは,有意な肝転移個数の減少を認めた(G207:2.5±3.0個。コントロール:6.4±2.5個。P<0.05)。ヌードマウスを用いた経脾肝転移モデルでは,肝転移個数に有意差を認めなかった(G207:12.6±4.8個。コントロール:15.9±3.5個)。以上より,in situ腫瘍ワクチン療法による肝転移抑制効果を認めた。 (結語)変異型ヘルペスウイルスを用いたin situ腫瘍ワクチン療法は,大腸癌肝転移転移を抑制する有効な治療と考えられ,その抑制にはT細胞が深く関与していることが示唆された。
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