はじめに、ラットの胃切開モデルを作成した。Wister ratを麻酔し、約5cmの正中切開で開腹し、胃の前面の約1cmを切開し、5.0バイクリルで3針全層一層の結節縫合を行いモデルを完成させた。術後2日目、4日目、7日目に再開腹し内圧測定を行った(それぞれ3匹ずつのratを利用した)。切開創に何もしていないコントロール群では術後2日目bursting pressure(以下、BP)が平均(以下数値は全て平均値)12.3mmHg(注入量3.3ml)、4日目42mmHg(注入量4.3ml)、7日目110mmHg(注入量23ml)であった。次にアドバシールを使用したモデルを作成し同様に実験を行った。アドバシールは胃切開創の縫合後約2mlを塗布し作成した。術後2日目は、BP47mmHg(注入量6.7ml)、4日目64.7mmHg(7.7ml)、7日目63.3(8ml)であった。また、アドバシール使用群で1例が腹腔内の感染で経過観察中に死亡した。以上より、アドバシールは術後早期では切開創の強化に有効であったが、7日目になると逆にコントロール群より悪くなったという結果になった。また、肉眼所見ではアドバシールによる腸管の癒着と胃壁に広範囲に塗布した時に胃壁の伸展不良がみられた。このことは7日目のburstまでの注入量の大きな差からも証明された。上記の結果に基づき、病理学的観察を術後4日目、7日目、28日目でそれぞれ3匹のratを用いて行った。アドバシール使用群では4日目の創部は治癒傾向にあるが7日目には縫合部が完全に離開して、一部に壊死を起している症例がみられ、28日目では一部がまだ吸収されずに残っていた。以上より、小動物でのアドバシールの塗布の方法や製剤そのものの検討(組織吸収時間がもう少し早くなるようにする)を行っているところである。
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