新しい大腸癌の転移抑制療法を確立するため(1)細胞接着阻害(2)シグナル伝達系阻害の2点から検討を開始した。 (1)細胞接着阻害:ラット大腸癌モデルで特に肝・肺転移モデルを、肝ー肺指向性細胞株の継代〜移植繰り返すことで樹立を試みた。まず肝転移指向性株を尾静脈より注入し肺転移巣を形成させ、この細胞培養株からまた肺転移巣を形成という5継代の繰り返しで肝ー肺指向性細胞株を樹立した。現在この樹立株を用いてラット盲腸漿膜下よりの自然転移モデルを作成中である。これはヒトにおける大腸癌の肝→肺と考えられている血行性転移経路が正しいのかを実験モデルで再現するもので、その意義は大きいと思われる。細胞接着ドメインとしてはフィブロネクチンのRGDとヘパリン結合ドメインを含む75kDaのfragmentを血漿より精製し得ており、転移抑制物質として投与中である。 (2)シグナル伝達系阻害:今年度は細胞外マトリックス産生や接着、アポトーシス誘導などに関与するシグナル伝達系としてTGF-β-Smadファミリーから研究対象とした。大腸癌手術症例の血中発現レベルや組織発現の程度につき検討し、肝転移例では血中TGF-β高値であった。次年度はSmadなどシグナル伝達分子自体やNDPキナーゼ/nm23アイソフォームに特異的アミノ酸配列を持つペプチドによる阻害に着手予定である。
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