本研究においては転移メカニズムの抑制をはかるため、大腸癌肝転移を動物実験モデルで再現し、細胞接着阻害およびシグナル伝達阻害による転移抑制の可能性を検討すべく研究遂行した。 [細胞接着阻害]ラット自然転移モデル(肝・肺転移)は、ラット由来大腸癌細胞を用いて肝-肺指向性細胞株の継代〜移植繰り返し樹立した。細胞接着阻害はfibronectin tryptic digestよりgelatin affinity column chromatography法にて単離・精製したfibronectin fragment(75kDa)を用いて検討した。In vitroにおいてはtype IV collagenを基質としたプレート上で癌細胞との接着阻害を実験し、濃度依存的に抑制結果を示した(max40%抑制)。In vivoにおいては転移モデル上で癌細胞注入と同日にfibronectin fragmentも投与し、100μg/mlでmax50%の抑制を示した。Lamininのcell binding domainを低温操作下に精製進める工夫したが、単一施設では設備的に限界で今後の継続課題となった。 [シグナル伝達系阻害]2種類のNDPキナーゼ/nm23アイソフォーム(18kDa)は細胞内局在が異なり、GTP結合蛋白質を介する転移のシグナル伝達系に重要な因子であるため、当初はそのアイソフォームに特異的アミノ酸配列を持つペプチドを検索したが、有意なものが見つからずシグナル伝達系のなかでも細胞増殖因子EGFR阻害作用をもつZD1839(4-(3-Chloro-4-fluorophenyl amino)-7-methoxy-6-(3-(4-morpholinyl)propoxy)quinazolineを用いた実験系の開始に到り、研究年限を迎えた。今後の展開は細胞接着阻害と血管新生阻害剤との併用で確認された効果に匹敵、ないし上回る抑制率が期待される。
|