研究概要 |
肝癌では、4qのLOHが高頻度に認められ、癌抑制遺伝子の存在が示唆されている。しかし、この領域を詳細に解析した報告はないため我々は肝癌における4q上の癌抑制遺伝子を同定する目的で染色体欠失地図を作製し、共通欠失領域のゲノムクローニングを試みている。 肝癌96症例の手術検体から抽出した癌および正常組織の各DNAを対象に、4qを網羅する39種類のマイクロサテライトマーカーを用いて、LOHの有無を調べた。さらに、共通欠失領域よりYAC,BAC,PACなどのゲノムクローンを単離し、同領域の物理的地図を作製した。 すなわち、4qのLOHは96症例中、71症例(74%)に認められた。また、各症例の欠失領域の検討から、4q21-22(56.6%)と4q35(43.8%)の2ヶ所に共通欠失領域を同定し、各々約1cMの範囲に限局化し得た。臨床病理学諸因子との相関の検討で、4q35領域の肝癌の進展に関与する癌抑制遺伝子の存在が示唆された。4q21-22の共通欠失領域を完全にカバーするYAC,BAC,PACによるコンティングを作製した。 以上の結果より、4qでは2ヶ所に肝癌発生に関与する未知の標的遺伝子の存在が示唆された。今後、コンティング上のgenome cloneのshotgun cloning法を進め、これらの領域より新しい癌抑制遺伝子の単離を試みる。
|