研究概要 |
我々は次世代の抗癌剤として、進行・再発癌に対して細胞周期G2期の制御による新たな癌治療の開発を目的とし研究を進めてきた。細胞周期G2期の制御の基礎的研究を行い、最近になリペプチドを用いて細胞周期G2期チェックポイントの特異的破壊に成功した。さらに細胞周期G2期制御機構(以下G2期チェックポイント)阻害に必要な標的分子の同定、およびそれにより引き起こされる抗腫瘍効果の増強を世界に先駆けて証明し、細胞周期G2期の破壊が癌治療の有効な治療法に成り得ることを示した(Cancer Research.59:5887-5891,1999.)。本助成金にて主に行った検討は、ヒト大腸癌細胞株HCT-116およびSW620における抗癌剤(ブレオマイシン、アドリアマイシン、シスプラチン)の増強作用と、正常細胞(ヒト繊維芽細胞株:NHDF)への影響である。大腸癌細胞株にはヌードマウス皮下移植にて、著明な抗腫瘍効果の増強を認め、それらはアポトーシスにより死滅していることが確認された。また正常細胞には、全く影響がないことが確認された(2000:日本癌学会、2001:Keystone Symposia、2001:American Association Cancer Researchにて報告)。さらに細胞周期G2期チェックポイントの特異的阻害物質の新しいスクリーニング法の確立にも成功した。これによりペプチドの最適化以外に、広範囲に既存の化合物ライブラリーをスクリーニングすることにより、効率よく細胞周期G2期チェックポイントの特異的阻害物質を探索することを可能とした。(これらの項目はアメリカFish & Richardson PCより国際特許として出願)これらの理論・技術は全て世界初であり、これらの技術をもとに、ベンチャー企業(CanBas Co., Ltd.)を設立した。現在、北里研究所生物機能研究所および株式会社医薬分子設計研究所にて薬剤スクリーニングを行っている。
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