研究概要 |
宿主の免疫系、特に細胞傷害性T細胞により認識されその標的となる癌拒絶抗原分子を同定することにより特異免疫応答を増強しようとする試み、すなわち癌ワクチンの開発がメラノーマに対し行われている。われわれの研究グループでは、メラノーマ以外の扁平上皮癌や腺癌に対する癌ワクチンの開発をすすめており、すでに食道癌および膀胱癌cDNAライブラリーより新規癌拒絶抗原遺伝子SART-1,SART-2,SART-3,ART-4を、また既知の遺伝子lckおよびサイクロフィリンBも癌拒絶抗原遺伝子であることを同定している。そこでこれらの癌拒絶抗原遺伝子によりコードされ、HLA拘束性に宿主細胞傷害性T細胞により認識される癌抗原ペプチドを同定することにより膵癌をはじめとする多くの癌に有効なペプチド癌ワクチンを開発することが可能となる。本年度は癌抗原ペプチドの同定、およびそれらによる細胞傷害性T細胞のin vitroでの誘導を試みた。日本人の約6割に発現しているHLA-A24分子拘束性に癌拒絶抗原を認識する細胞傷害性T細胞株を用いて、HLA-A2402結合モチーフを有する上記癌拒絶抗原遺伝子によりコードされる癌抗原ペプチドのスクリーニングを行った。その結果、SART-1では690-698番目のペプチドが、SART-2では93-101番目、161-169番目,および899-907番目のペプチドが、SART-3では109-118番目、315-323番目のペプチドが、サイクロフィリンBでは84-92番目、91-99番目のペプチドが同定された。また、ART-4からは13-20番目および75-84番目の2ペプチドが、lck分子からは208-216番目、486-494番目、および488-497番目の3ペプチドがHLA-A24拘束性に宿主細胞傷害性T細胞により認識されることが明らかとなった。
|