僧帽弁位に使用する重力による閉鎖開始機能を備えた機械式心臓代用弁(機械弁)を設計した。設計項目は弁口輪の外径D、内径d、高さH、オクルーダの厚さt、長さL、ヒンジ形状、位置とヒンジ溝の幅w、深さa、回転角θo、θcである。各値を決める上で臨床使用されている機械弁を参考にした。ヒンジ部分などの詳細な寸法値はメーカから開示されておらず、汎用の形状測定器などを利用して実測した値を参考にした。形状から幾何学的に決められる部分は汎用の数学計算ソフトから算出した。以上の検討から、D=29、d=24、H=7.6、t=1、L=12.77、w=0.7、a=0.7、θo=80°、θc=20°に決定し、設計した図面を金属加工業者に発注した。年度の中期に納品された試作弁ではオクルーダ単体の重力による閉鎖開始機能は確認できたが、1)弁閉鎖時に2枚のオクルーダの端が接触して完全に閉鎖しない、2)ヒンジ部の摩擦のため開閉運動がなめらかでないなどの問題点があった。現在、上記1)の課題に関して、再計算中である。2)について、機械弁メーカ(全て海外)との交渉も検討中である。実施計画に掲げた流体力学的評価実験は未着手である。 2年間の研究期間を通じてオクルーダ単体の加工が可能なことは示されたが、ヒンジ部も含めた機械弁全体の設計及び加工の難しさが浮き彫りになった。また、汎用の数値計算ソフトにより形状設計や流体構逍連成解析を試みて、オクルーダの設計に関して有効性が示された。今後は機械弁設計データベース構築を目指して各メーカや大学などの研究機関と議論を深める予定である。
|