腫瘍血流の安定性から、担癌モデルをSato Lung Cancer(以下SLC)のかわりに吉田肉腫LY-80に変更した。LY-80組織内酸素分圧(PTO2)の測定方法としてはOxyspot(パラジウムコプロポルフィリンをラット頚静脈から静注し、励起後の燐光の減衰消滅時間から腫瘍内酸素分圧を測定する装置.)を採用し、人工酸素運搬体を投与することによる腫瘍内酸素分圧の変化を測定した。【対象と方法】人工酸素運搬体は、アルブミンヘム、フルオロカーボン、Hgb-vesicleの3種類を移植ラットの尾静脈から投与した。コントロールとしてラクテック及び5%アルブミンを設定した。投与前と投与後の腫瘍内酸素分圧を経時的にPxyspotで測定した。【麻酔と測定条件】ハロセン吸入麻酔下自発呼吸、保温下及び血圧モニター下にて測定。【結果】個体によっては腫瘍酸素分圧の上昇が見られたものもあったが、全体としてはいずれの人工酸素運搬体においても著明な腫瘍酸素分圧の上昇は得られなかった。この原因としては、人工酸素運搬体投与により何らかのかたちで腫瘍血流が低下することが関与しているものと思われる。microsphere法によりこの腫瘍血流の動態を確認するのを急ぐとともに、腫瘍血管抵抗をある程度維持する物質との同時投与などを計画している。また今後は腫瘍の移植部位を足背に変更し、酸素で飽和した人工酸素運搬体の大腿動脈からの動注プロトコールを予定している。個体数を重ねて、さらには抗癌剤及び放射線と組み合わせた抗腫瘍効果増強について実験を重ねてゆく予定である。
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