研究概要 |
研究の背景・目的:脳虚血の際に一酸化窒素(NO)が増加しcyclic GMP(cGMP)も増加する。PDE-5阻害剤はcGMPの分解を阻害して細胞内濃度を上昇させるが、この物質の投与時の脳循環の変化は未解明である。脳虚血急性期のcGMPの人為的な増加亢進が脳梗塞にどの様に影響するか検討している。方法:ラット脳虚血モデルにおいて、1,2,6時間虚血後に血流を再開しPDE-5阻害剤の一つであるZaprinast(20mg/kg)あるいは生食(control)を投与して脳梗塞の範囲、脳浮腫(脳血管関門の透過性)を検討した。またzaprinast単独による影響を調べるために頸動脈結紮のみの(脳梗塞は頸動脈結紮のみでは生じない)Sham operation群でも同様の検討を行った。脳梗塞の範囲は、摘出した脳をTTC溶液にて染色し梗塞範囲を体積として算出しzaprinast群とcotrol群との比較をしている。脳浮腫(脳血管関門の透過性亢進部位)は14C-amynoisobutylic acid(20 microCi/kg)を静注し脳を摘出。凍結切片としてX線フィルムに感光させオートラジオグラフィーを作成し、血液中と脳標本中のRI濃度から血管透過性および脳血流量を算出し比較検討している。結果と現況:現時点ではPDE-5阻害剤投与により有意な梗塞巣の拡大・縮小は認められない。脳血管透過性はischemic coreより広い範囲で再開通により透過性亢進が認められる傾向がある。この部位はzaprinast投与で透過性亢進が強く認められる傾向がある。Sham operation群では脳血管関門の状態はzaprinast投与による変化は見られない。これらの結果は血管拡張の影響も考慮して慎重に検討を重ねる必要がある。
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