ラット脳梗塞モデルである小泉モデル(塞栓糸を用いた再開通可能な脳梗塞モデル)において、PDE-V阻害剤のひとつであるzaprinast10mg/kgを投与した際の脳血流の変化をlaser doppler flowmetryを用いて血圧とともに測定したところ、zaprinast10mg/kg静脈注入は平均血圧を18.3%(n=4)低下させるが、脳血流は脳虚血部位で10分後に9.6%(n=6)、20分後には11.6%(n=4)増加させる作用が認められた。Phosphate buffered salineを投与した群では投与開始時にわずかに血圧が上昇し一過性に脳血流も増加したがすぐに投与前の状態に戻った。Sham operation群ではzaprinast投与によっても脳血流は変化しなかった。 同じモデルを用いて、2時間虚血1時間再開通させた場合の脳梗塞の体積を測定し、PDE-V阻害剤の有無で比較したが明らかな差は認められなかった。 脳血管透過性は脳浮腫の重要な因子であり、これを調べるために^<14>C AIBをtracerとしたオートラジオグラフィー法で測定したところ、脳虚血側の尾状核、脳質周囲でPDE-V阻害剤投与群の方がやや高く大脳皮質では低い値となっていた。 PDE-V阻害剤投与により血圧は明らかに低下するものの脳血流は増加が認められた。虚血前の状態でも軽度変化するが、虚血状態での反応の方が強く認められ。単に血管拡張が生じる物質では虚血部では血管反応性が低下しているため盗血現象(steal phenomenon)を生じ、かえって病変部の血流が低下する正常組織でもPDE-V阻害剤により血管拡張は生じうるが、NO-cGMP系が活発に働いている部位、今回の実験でいえば脳虚血部位に強く作用が現れるものと考えられる。即ち、病変部に選択的な血管拡張作用が存在する可能性が示唆された。しかし、病変部の血流が増加する事と、cGMPによる直接の透過性亢進により脳浮腫が増悪することも考慮すべきである。
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