研究概要 |
全ゲノム上における遺伝子,染色体異常を検出するcomparative genomic hybridization(CGH)法および,染色体の複雑な構造異常を詳細に検出しうるspectral karyotyping(SKY)法を用いて,神経膠芽腫細胞株について染色体構造異常を解析した.異常染色体部分の由来を調べた結果,CGHで認められた増幅領域が転座,挿入などの構造異常を高頻度に示すことが明らかになった. これまで神経膠腫のgenetic pathwayについては未だ不明な点が多い.45例の神経膠腫の臨床検体を用いて,CGH解析の臨床的有用性について検討した.従来secondary typeに異常が多いとされるp53遺伝子異常について免疫組織学的手法とPCR-SSCP法により検討し,de novo発生の悪性神経膠腫に多いとされるEGFR遺伝子異常についても検討した.これと同時に,laser scanning cytometer(LSC)とMIB-1染色による腫瘍増殖能との関連性について調べた.その結果,以下の結果が統計学的有意差をもって示された.8q増幅を有する悪性神経膠腫はp53遺伝子異常が多く,7p増幅を有する悪性神経膠腫はEGFR遺伝子異常を高頻度に有する.前者は後者より予後良好で腫瘍増殖能が低く,若年発症例が多い.以上の結果は,これまでの病理学的所見では鑑別困難な,神経膠腫における悪性化の指標および神経膠腫のgenetic pathwayを示すものであった. 腫瘍内heterogeneityについては,既に報告したCGH解析に加え,個々の細胞レベルでの解析が可能であるFISH法,LSCにより詳細に検討した.7番,10番染色体の染色体不安定性が,腫瘍内genetic heterogeneityと極めて関連性が高いことが明らかになった.
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