砂ネズミの一過性前脳虚血モデルを用い、microdialysis法で脳虚血中および虚血後のDAとその代謝産物であるDOPAC、HVA、そして3-MTの細胞外腔への放出状況を、MAO阻害剤であるpargylineの投与・非投与群で測定した。この2群間で実験条件を一定にするため砂ネズミの体血圧、直腸温、局所脳血流の測定を行ったが、体血圧、直腸温に関しては有意差は認められなかった。局所脳血流については、虚血中に差は認められなかったが、再開通後早期にpargyline非投与群では脳血流の一時的な回復を認めたが、pargyline投与では認められなかった。 DAとその代謝産物のsamplingは虚血前2時間、虚血15分、再開後の15分、1時間、6時間後に行った。細胞外液中のDA量は、虚血前には線状体で0.082±0.06pmol/10μ1であったが、皮質では測定可能範囲以下であった。虚血開始後数分でDA量の増加を認め、この変化は皮質よりも線状体で著明であった。また、その増加は虚血後15分まで継続して認められた。pargyline投与群では、虚血前のDA量は非投与群と差を認めなかったが、虚血による増加は非投与群より著明となり、その変化は皮質で大きかった。3-MTは虚血と同時に上昇し、線状体・皮質ともに虚血後30分まで有意な上昇を認め、nor-malizationは虚血後1時間経ってからであった。pargyline投与群における変化は、非投与群より著明となり線状体・皮質ともに虚血後6時間まで上昇を認めた。DOPAC、HVAは、虚血により減少を認め虚血後15分まで有意に低値を示し続けた。pargyline投与群では、これらは虚血前より著明に低値を示し、虚血後6時間まで持続して低値で推移した。 以上、脳虚血により惹起されるDA放出、MAO由来のDA代謝産物の減少、そして3-MTの蓄積がpargyline前投与により促進されるとともに、その状態が持続することが判明した。今後は、in vitroの実験で実験動物脳よりミトコンドリア内のMAO活性、SOD活性、lipid peroxidationを測定する。
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