実験は、砂ネズミの両側総頚動脈を15分間閉塞する一過性前脳虚血モデルを用いて行った。平成11年度にはmicrodialysis法で脳虚血中および虚血後のDopamine(DA)とその代謝産物であるDOPAC、HVA、そして3-MTの細胞外腔への放出状況を、MAO阻害剤であるpargylineの投与・非投与群で測定したが、平成12年度には、in vitro実験で採取した実験動物脳よりDAの代謝過程で産生されるフリーラジカルに関連したミトコンドリア内のmonoamine oxidase(MAO)活性、superoxide dismutase(SOD)活性、lipid peroxidationを測定した。 SOD活性は、大脳皮質で虚血前の85%、線状体で67%まで低下し、再開通後1時間後まで有意な低下を認めた。ミトコンドリア膜のlipid peroxidationの評価としてのTBARMの産生量は、15分間虚血だけでは変化は認めなかったが、虚血後より増加を認め6時間後まで高値で推移した。一方、SOD活性は虚血後6時間には大脳皮質・線状体ともに正常化していた。 以上、平成11年度と平成12年度の結果から、虚血により細胞外液中に放出されたDAは、MAO活性の低下と伴にDOPAC・HVAへと代謝されるdeaminationから、酸素を必要しないCOMTにより産生される3-MTへのo-methylationに代謝過程が変化していた。この変化は、MAO阻害剤のpargyline前投与で更に強調して認められた。また、このDA代謝の変化が、脳血流にも影響していることが示唆された。虚血後にミトコンドリア内のSOD活性の低下とTBARMの増加を認めたことより、DAの代謝過程で発生するフリーラジカルに対する防護機構の障害が示唆された。
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