研究概要 |
本研究は高次脳機能障害モデル動物の一つである先天性水頭症モデル動物(LEW-HYR)を用い、神経細胞やグリア細胞の機能のみならず脳内免疫系およぴ細胞外環境系を考慮した水頭症の進行に伴う機能性変化の解明を目的とする。そのため、初年度においては水頭症進行時における細胞障害を検索するため細胞内Bc1-2の変動を中心に研究を行った。方法として、LEW-HYRからは正常ラットと典型的な水頭症ラットの比率は7:3であったことから、各LEW-HYRから出生した典型的な水頭症ラットと同数の正常ラットを対照群として使用した。生後7およぴ14日で断頭を行った。その後、直ちに氷冷中で大脳皮質と小脳に分け,測定日まで-80℃で保存した。Bc1-2の測定は各脳部位を10mMTris液で組織混和した後,SDSーpage法で電気泳動を行った。定量解析は泳動後銀染色を行い得られた結果をLane Analyzer22で行った。結果として,典型的な水頭症群は生後7日目に大脳皮質で明らかなBc1-2発現の増加が認められた。しかも,この増加は水頭症の進行程度により発現頻度の亢進が生じることが確認された。しかしながら,生後14日目では増量が確認されなかった。さらに,小悩においては,明確な変動が認められなかった。この結果は,SDS-pageによる泳動法では感度の間題から詳細な成績が得られていない可能性も考慮される。すなわち,本研究成績と以前の成績を加味すると大脳皮質においてLEW-HYRの神経機能の発達は正常群と水頭症群では著明に異なっており,生後7日目までは大脳皮質における神経障害が生じており,その際,生存している細胞においてBc1-2が発現することが示唆される。しかしながら,生後2週間を経過すると殆どの大脳皮質における細胞は障害をうけることからBc1-2の発現は消失するものと思われる。
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