平成11年度の実験で、髄芽腫細胞株D425(原発巣)とD458(播種細胞)にレチノイン酸処理を行ったところ、D425は細胞死をD458は神経細胞様分化を示した。RT-PCRでの検討で、D425とD458ともRA添加前からNeurotropinであるBDNF、NT3の発現が添加後も発現は持続し、受容体のtrkB、trkCはD425とD458ともRA添加後のみに発現がみられた。低親和性受容p75NTRは、RA添加後分化したD458にのみに発現していた。 平成12年度の実験では、この分化を示したD458を長期培養した。レチノイン酸の週2回処理をしたところ約4週間から5週間で細胞同士が凝集塊を作り、その凝集塊同士が細胞体の5倍以上の突起で結合した。形態的には成熟神経細胞に酷似していた。その過程で細胞死が認められた為、DNA電気泳動を施行した所D425と同様、D458のRA処理細胞でもDNA ladderが認められ、細胞分化とともに細胞死が同時に起こっていることを示した。これは、Trk遺伝子を導入したD458trk細胞がリガンドであるNGFの添加で分化を示したが、細胞死を示さなかった結果とは異なった。P75NTRのMouse Monoclonal抗体を入手し免疫組織染色を施行した。D425のRA処理細胞は陰性であったが、D458のRA処理細胞では処理早期3日後以降、細胞表面に発現していることが示された。しかし、Western Blottingや免疫沈降法で、P75NTRの発現は発現量の問題か、抗体自体の問題か、陽性バンドが認められなかった。
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