脳卒中や外傷に起因する神経細胞傷害に、NMDA型グルタミン酸受容体を介するグルタミン酸毒性が関与しているとの仮説がある。申請者らは、フィラメントモデルによる一過性閉塞モデル(1時間)で、24時間後の脳梗塞体積をNMDA受容体サブユニットNR2C遺伝子欠損ノックアウトマウスとワイルドタイプマウスで比較した。麻酔はハロセンの吸入により、虚血前、虚血後の局所脳血流量をレーザードップラーを用いて計測した。1時間中大脳動脈永久閉塞24時間後のTTC染色評価による脳梗塞体積は、ワイルドタイプマウスでは41.8+/-9.2%体側大脳半球体積(n=18)であったのに対して、NR2Cノックアウトマウスでは27.4+/-9.7%体側大脳半球体積(n=20)と有意な脳梗塞縮小が認められた。虚血後の直腸温度、局所脳血流量には2群間で有意な差がなかった。したがって、これらの結果はNR2Cノックアウトマウスにおける脳梗塞縮小傾向は、体温や脳血流量の変化など循環動態の差によるのではなく、NR2Cサブユニット遺伝子欠損によるNMDA型グルタミン酸受容体の機能変化による可能性を示唆する。NR2Cサブユニット遺伝子欠損による脳梗塞縮小のメカニズムを明らかにする必要がある。
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