研究概要 |
難冶性偽関節の分子生物学的治療を考える上で、我々が以前に報告した骨折仮骨形成の鍵を握る因子である骨形成因子について着目し、その遺伝子誘導のメカニズムについて解析した。骨形成因子の遺伝子発現は骨折治癒の初期に著名に誘導されることを我々は以前に明らかにしているが(J Bone Miner Res,1994)、その誘導のメカニズムについては明らかでは無い。本研究では骨形成因子遺伝子の誘導因子のひとつとしてメカニカルストレスに着目し、特にメカニカルストレスの影響を受けやすい支持器官としての脊椎に着目して脊椎不安定性をきたす動物モデルを用い、メカニカルストレスにもっともよく反応する部位である靭帯付着部の細胞における骨形成因子およびレセプターの遺伝子発現様式について検討した。その結果不安定性の強い早期において靭帯付着部の細部において骨形成因子およびそのレセプター遺伝子が誘導され、その結果その後に続く添加性の内軟骨性骨化が生じることを示した(Bone,2000)。さらにこのような添加性内軟骨性骨形成の過程で骨形成因子の遺伝子発現に引き続き、骨軟骨基質蛋白遺伝子の発現が著明に増加し、メカニカルストレスによる骨形成因子の遺伝子誘導というひとつの手法が、その後の骨軟骨形成を分子生物学的レベルにおいても促進する可能性を示唆した。これら一連の研究結果は、難治性偽関節においてもメカニカルストレスを有効に活用することにより局所での骨形成因子の遺伝子発現を高め、新たな骨軟骨形成を誘導しうる可能性を示すものである。
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