本研究者はすでに不活化センダイウイルス融合リポソーム(HVJ-リポソーム)を用いた実験動物関節内直接的遺伝子導入法を確立したが、同法を用いて転写因子制御による関節炎抑制を試みた。 コラーゲン関節炎ラットの足関節に関節炎発症後HVJ-リポソーム法を用いてNFkBに対するおとり型核酸医薬(デコイ)を直接的に導入した。スクランブルデコイを導入した対照群と比べ、NFkBデコイ導入群では導入後14日より有意に関節腫脹が軽減し、X線および組織学的検討においても関節破壊の程度が抑制されていた。また、導入後1週および7週後の関節滑膜中の炎症性サイトカインであるTNFa、IL-1b濃度は有意に抑制されていた。また、器官培養系を用いた in vitroの実験系においてもNFkBデコイ導入により滑膜組織からのIL-1b、IL-6、TNFa、matrix metalloprotcinasc-1(MMP-1)の産生は有意に抑制され、また滑膜組織における intracellular adhesion moleculeー1(ICAM-1)の発現が減少していることがELISA法に用いて確認された。さらに、NFkBデコイ導入により培養滑膜組織の増殖抑制効果も確認された。 以上によりin vivoおよびin vitroにおいてHVJ-リポソーム法を用いたNFkBデゴイ導入法は関節炎抑制に有効であることが示され、慢性関節リウマチ治療法の有力な候補であることが示された。
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