【研究実績の概要】【目的】慢性関節リウマチ(RA)の骨関節破壊のメカニズム解明のために、RAの骨破壊には破骨細胞による骨吸収が不可欠であるか否かを明らかにすることを本研究の目的とした。昨年度は、破骨細胞性骨吸収を抑制できるビスフォスフォネート(YM175)を前投与したラットでは、アジュバント関節炎(AA)を誘導しても、骨関節破壊が起こらないことを見いだし、破骨細胞による骨吸収を阻害することによりRAの骨関節破壊を制御できる可能性を示した。そこで、今年度は関節炎発症後のAAに、YM175を投与し、骨および関節の破壊を抑制できるか否か検討した。また関節の炎症に及ぼすBPの影響についても検討した。YM175による抗炎症作用のメカニズムを探るために、マクロファージ様細胞による炎症性サイトカインの産生を検討した。【方法】YM175をAAの関節炎発症後に連日皮下投与し、四肢関節の腫脹を関節点数、後肢容積で、関節破壊の程度はX線および組織学的に(HE.Safranin-OおよびTRAP染色)評価した。【結果】AAの発症後にYM175を投与しても骨関節破壊が濃度依存的に抑制された。YM175投与によりTRAP陽性の破骨細胞はアポトーシス様形態変化をきたした。関節軟骨の変性もYM175により抑制されていることがSafranin-O染色で確認された。関節の炎症の指標である関節点数および後肢容積もYM175により抑制された。YM175はマウス骨髄球系細胞によるTNF-αおよびIL-6の産生を抑制した。【結論】ビスフォスフォネートにより破骨細胞性骨吸収を抑制することにより骨関節破壊が抑制されたことから、関節炎に伴う骨関節破壊には、破骨細胞による骨吸収が強く関与していると考えられた。またYM175は、骨関節破壊および関節炎を抑制することから、RAの治療薬として臨床応用できる可能性が示唆された。
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