本研究の目的は、Ewing肉腫(ES)およびPrimitive Neuroectodermal Tumor(PNET)(ES/PNET)において特異的に生じている異常な転写因子EWS-Fli1の標的遺伝子における標的遺伝子を同定し、その解析を行うことである。平成11年度においては、以下の実験を行った。 (1)EWS-Fli1遺伝子をクローニングし、発現ベクターに組み込んで、正常線維芽細胞に導入した。この細胞をヌードマウスに移植したところ、造腫瘍性が確認された。この腫瘍から細胞株を樹立し、生物学的性質の解析を行った。 (2)ES/PNET細胞をEWS-Fli1に対するantisense oligonucleotideで処理すると増殖が阻害される。そこで、antisense oligonucleotide処理前後のES/PNET細胞よりmRNAを抽出し、probeを作成し、cDNA microarrayにより遺伝子発現の変化を調べた。その結果、EWS-Fli1の下流で発現変化を受けているいくつかの遺伝子が判明した。これらの遺伝子は、EWS-Fli1の標的遺伝子である可能性が高いと考えられ、現在解析を進めている。 (3)ES/PNET細胞をEWS-Fli1に対するantisense oligonucleotideで処理し、細胞周期関連因子の発現変化を調べると、G1-S期移行に関わるCyclin D1、Cyclin E、p21およびp27の発現が大きく変化しており、antisense oligonucleotideによる増殖抑制の原因の一つと考えられた。現在、これらの遺伝子のプロモーター領域を解析し、EWS-Fli1の結合部位とプロモーター活性の解析を進めている。
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