本研究では交感神経皮膚反応(SSR)を交感神経活動の指標として健常成人16名を対象に、右手での持続性把持運動に伴う両側の交感神経活動の変化およびその時の脳波変動との関係について検討した。 1.運動準備期ではSSR平均振幅およびalpha帯域パワーの有意な変動が観察されなかった。これより20秒間の準備期においては必ずしも被験者が準備状態にある訳ではないことが明らかとなった。 2.30%MVC課題開始に伴って運動側のSSR振幅は非運動側に比べ有意に増大した(p<0.01)。またalpha、beta帯域パワーについてはC3、C4において安静時より有意に減少した(p<0.05)。これらは随意収縮に伴って発射される求心性インパルスが視床-皮質系の活動に変化をもたらし下降性インパルスの一部が視床下部、あるいは延髄を介し皮膚感神経活動を亢進させたためと推察された。 3.運動開始直後、終了直後において運動側のSSR潜時が対側の約50%まで有意に短縮した(p<0.01)。この短縮は反射経路の変化ではなく、動作筋の収縮に伴った皮膚電位活動の変化によるものと考察した。 4.回復期ではSSR振幅の減少および左右差が生じた。この現象はhabituationのみならず、運動による運動側の交感神経活動の抑制効果を示唆し、その抑制は脳波変動がみられないことから、皮質より下位の中枢によって行われていることが推察された。
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