最近になって、半導体デバイスや磁気ディスク中の薄膜の力学的性質の評価の観点から、超微小押し込み硬さ試験機が開発されている。これらは微小範囲の硬さ測定に対し、現時点では最も有望であると考えられ、骨梁への押し込み評価が可能である。 本研究ではこのナノインデンテーション硬さ試験機を利用し、変性関節および変性を認めない軟骨下海綿骨骨梁構造の硬さ分布を詳細に測定することである。さらに、これと同時に骨梁形態についても3次元データとして把握することである。以上の結果をもとに、新しいシミュレーションモデルを作成し、関節端の応力解析を行えば、変形性関節症の発生機序および発生メカニズムの解明に関する研究に寄与できると考えたからである。 本年度の目的は、骨標本の軟X線撮影により骨梁構造を画像抽出し、以上の局所硬さ分布と骨梁形態をもとに、より実物に近い有限要素関節モデルを作成し、これらを用いてコンピュータシミュレーションによる応力解析を行うことであった。そして得られた結果より、変形性関節症の関節の負荷支持機構、関節潤滑および衝撃緩衝機能の3つの力学的機能について明らかにすることであった。 本年度は平成11年度で抽出された骨梁画像を3次元関節モデルに構築し、平成11年度で求めた局所材料定数を用い、生体関節にできるだけ近いモデルを構築することができた。これらを用いた応力解析結果は、関節症発生解明の新しい知見を得る可能性があるものと期待している。
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