本年度は、新規のヒト低分子量G蛋白質調節因子CDEPの機能について、リコンビナント蛋白質を発現させ、それを用いて検討した。 先ず、CDEPのDHおよびPHドメインを含むcDNA断片をpV-IKSベクターに組み込み、sf9昆虫細胞に感染させ、リコンビナント蛋白質を発現させた。次に、その精製を試みたが、不溶性であり、GDP解離反応の実験には未精製のcell lysateを用いて行った。 CDEPによるRho AからのGDP解離反応は、sf9で発現させたGST-Rho Aに[3H]GDPを結合させた後に、リコンビナントCDEP蛋白質を加え、Rho Aに結合している[3H]GDPの放射活性を測定し、検討した。その結果、CDEPは容量依存的に[3H]GDPのRho Aに対する結合を減少させた。 CDEP遺伝子のもつがん化能については、5'側を欠失させたCDEPcDNA断片をpSVL発現ベクターに組み込み、NIH3T3に導入してトランスフォーミング活性の有無を評価した。その結果、約3週間で単細胞層上に重層のコロニーを形成し、しかもコロニーを形成する細胞は、トランスフォームした細胞に特有の円形または紡錘形の形態を呈していた。 以上の結果から、CDEPはRhoグアニンヌクレオチド交換因子(Rho GEF)として作用し、Rhoの活性を制御しうることが示唆された。Rhoはアクチン系細胞骨格の機能を調節することで細胞の形態や、分化の調節をしていることから、CDEPがRhoを介して細胞の形態や分化に何らかの影響をおよぼしている可能性が示唆された。また、5'側を欠失させたCDEPcDNA断片が、NIH3T3細胞を悪性形質変換させたことから、癌遺伝子として機能しうる可能性も示唆された。将来的には、CDEPの機能を活性化あるいは抑制することにより、細胞の分化誘導や癌の増殖を制御することが可能になるのではないかと考えている。
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