研究概要 |
【目的】我々は、固定したウサギ膝関節の組織標本をSafranin O染色し、固定1〜2週間で染色性が一部低下する初期の変性、固定4週間では軟骨に亀裂を生じる中等度の変性、固定6週間では軟骨に潰瘍形成を生じる重度の変性を認めた(Ann Rheum Dis,1996,55:181-6)。 今回、膝関節を固定することにより生じる軟骨変性において、骨軟骨細胞にp53遺伝子に関連するアポトーシスが生じるかどうか、ウサギおよびp53(-/-)マウスを用いて調べた。 【方法】6ヶ月齢雄の日本白色ウサギの右膝関節を3、4週間ギプス固定した。屠殺後膝関節をTUNEL法にてアポトーシス染色した。また未固定群と固定群の膝関節軟骨よりmRNAを採取し、RT-PCRにてp53遺伝子の発現量を定量的に比較した。 さらに8週齢雄のp53(-/-)マウスおよびその対照として8週齢雄のC57BL/6Jマウスの右膝関節を2週間bandage固定し、TUNEL法にてアポトーシス染色した。 【結果】ウサギ膝関節4週間固定にて大腿骨および脛骨とも関節軟骨細胞、骨端の骨細胞および成長板軟骨細胞にアポトーシスを認めた。関節軟骨のとくに表層に多くアポトーシスを起こした細胞が生じていた。骨端では骨形成部分の骨細胞や骨芽細胞と思われる細胞にもアポトーシスを認めた。 mRNAのRT-PCRでは、固定群の方が未固定群よりも若干多く、p53遺伝子発現の上昇傾向が見られた。 C57BL/6Jマウスでもウサギと同様に関節軟骨、半月版、骨端および成長板軟骨にアポトーシスを認めた。しかしながら、p53(-/-)マウスではいずれの個所にもアポトーシスを認めなかった。 【結語】膝関節固定による荷重の減少という一種の生体ストレスにおける骨軟骨細胞のアポトーシスには、p53遺伝子が関与していることが示唆された。
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