異所性に骨・軟骨を形成する作用を持つ骨形成因子(BMP)のシグナル伝達系について検討し以下の知見を得た。まず、BMPファミリー一員であるBMP-6の骨細胞分化に関連したシグナル伝達機構を解析した。BMP-6は未分化間葉系細胞から骨芽細胞まで分化度の異なる3種類の細胞株すべてでALPを強く誘導した。BMP-6は主にI型レセプターとしてActR-I、II型レセプターではActR-IIBとBMPR-IIに強く結合したが、細胞によってはI型レセプターの中でBMPR-IAやBMPR-IBとの結合も認められた。いずれの細胞でも共通してSmad1とSmad5のリン酸化と核移行が認められ、もう一つのBMPに特異的なR-Smadと考えられているSmad8のリン酸化と核移行は認められなかった。次にBMPによるC2C12細胞の骨芽細胞への分化にSmadがどのように関わっていくかを、アデノウィルスベクターによる発現形を用いて検討した。BMP処理を行った細胞で、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性の上昇が認められるが、Smad1及びSmad5を過剰発現された細胞ではその活性が更に増強された。しかしSmad2を過剰発現させた細胞ではコントロールと変わらず、Smad6及びSmad7(抑制型Smad)を過剰発現させた細胞では、逆にALP活性の低下が認められた。これらのことから、C2C12細胞におけるBMPによる骨芽細胞への分化にSmadのシグナル伝達系が強く関与していると考えられた。さらに、転写因子であるPEBP2/CBFがR-Smadと結合し強調的に作用していることを明らかにし、PEBP2/CBFがTGF-βsuperfamilyのシグナル伝達経路における核内tagetとして機能していることを示した。
|