1:本研究は、延髄吸収中枢における、オピオイドの作用部位を明らかにすることを目的としている。本年度の目標は、新生ラットの延髄において呼吸関連部位におけるオピオイド受容体(特にMu-受容体)の分布を明らかにすることである。 2:当初、オピオイド受容体の分布をin situ hybridization法による検討する予定であったが、本年、免疫組織染色用の抗オピオイド受容体抗体が市販されたため、免疫組織染色を用いることとした。本法により、オピオイド受容体を直接同定することが可能である。 3:動物を、ホルマリンで灌流固定し、脳を摘出し、ショ糖液で置換後、30μmの厚さの凍結切断を作製した。抗体は、カルビオケム社製ポリクロナ-ル抗Mu-受容体抗体(ウサギIgG)を使用し、ABC法により発色させた。 4:(1)アダルトラットの延髄、脊髄におけるMu-オピオイド受容体の分布調べたところ、本抗体が、免疫組織染色に使用できる抗体であることが確認された。また至適抗体濃度は5000-20000倍希釈であった。(2)アダルトラットの延髄においては、現在呼吸のリズム生成部位として最有力候補とされている、Per-Botzinger complexに一致する部位にMu-オピオイド受容体が多く存在した。(3)現在、新生ラットの延髄において、実験中である。現在までの結果をまとめると、新生ラットの延髄においてもPer-Botzinger complexニ一致する部位に比較的Mu-オピオイド受容体が多く存在するが、アダルトラットより少ないようである。 5:来年度は、新生ラットの延髄スライス標本を用い、本年度明らかにされたオピオイド受容体の豊富な部位にオピオイドを注入し、どの部位が呼吸抑制に関係しているかについて明らかにする。
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