研究概要 |
SDラットの肺動脈リングを用い腸管膜動脈を虚血再灌流した研究で、虚血再灌流によりアセチルコリン(レセプター依存性拡張反応)、A23187(レセプター非依存性拡張反応)に対する拡張反応は減弱し、虚血前にPARS(Poly-ADP-ribose-synthetase)阻害薬を投与することにより拡張反応の減弱を抑制できることを報告した。しかし、肺血管抵抗増加の主体となるのは左右主肺動脈より末梢の肺内細動脈であると考えられるため、今回実体顕微鏡を用いて虚血再灌流による末梢肺動脈血管径の変化、またPARS阻害薬の血管径に対する効果を調べることを目的として研究を行った。【方法】雄SDラット(9週,体重350-450g)を用い、ネンブタール60mg/kg腹腔内投与後、右内頚静脈にカニュレーションしネンブタール10mg/kg/hで麻酔維持。気管切開後、酸素1L/min、笑気2L/min、最大気道内圧10cmH_2O、70bpmで人工呼吸。開腹し腸管膜動脈を1時間クランプ後解除し虚血再灌流モデルとした。対象を(1)コントロール群、(2)虚血再灌流群、(3)虚血15分前PARS阻害薬投与群に分けた。クランプ解除1時間後より実体顕微鏡を用いて右肺の末梢肺動脈径を観察した。【結果及び考察】開胸し右肺を露出するにあたって開胸創、肺実質よりの出血、また進行性の代謝性アシドーシスのコントロールがつかず、vivoでの肺動脈径の観察には至らなかった。そこで現在肺動脈圧測定により肺血管抵抗を比較する方法を模索中である。右内頚静脈より肺動脈ヘカテーテルを挿入し肺動脈圧を測定。各群での肺動脈圧の経時的変化を比較している。まだ研究途上ではあるが、今のところ虚血再灌流により肺動脈圧は有意に上昇し、PARS阻害薬虚血15分前投与によりこの上昇は抑制できる傾向にあるという結果を得ている。
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