研究概要 |
膀胱容量の変化が呼吸・循環系にどのような影響を与えるかを検討する準備段階として,解析を半自動化かつ客観的に行うため,呼吸流量のシグナルから一回換気量・呼吸数・吸気時間・呼気時間・分時換気量をbreath-by-breathに計算するソフトウェアー,および,血圧脈波形のシグナルから収縮期血圧・拡張期血圧・平均血圧・脈拍数をbeat-by-beatに計算するソフトウェアーをS言語を用い作成した. アメリカ麻酔学会のPhysical Status分類1および2の予定手術を受ける患者9人を対象に膀胱容量の変化が呼吸・循環系にどのような変化を与えるかを検討した.前投薬は硫酸アトロピン0.5mg,ヒドロキシジン50mg,ファモチジン20mgを入室45分前に筋注した.麻酔はベクロニウ1.5mgで前弛緩後,チオペンタール5mg/kg,スキサメトニウム1.5mg/kgで導入,気管内挿管後、酸素・笑気・セボフルレンで麻酔を維持した.膀胱カテーテルは3-wayシリコン製のものを留置した.手術終了後、吸入セボフルレン濃度0.5%、笑気40%及び酸素とし,自発呼吸下で後述の諸変量安定後,6ml/kgの37度加温生食を約5分で膀胱に注入,5分後排出させた. その間,血的血圧・気管内圧・気管流量・食道内圧・膀胱内圧・直腸内圧を連続的に測定、平均血圧と脈拍数は動脈圧波形から,肺容量・呼吸数・吸気時間・呼気時間等は気管流量波形から上述のソフトウェアーを用い計算した.結果,膀胱の受動的拡張に対し,ある個体では明らかな生理学的反応を示したが、全体では、いずれの測定項目も統計的に有意な変化を認めなかったものの,膀胱充満により軽度の血圧上昇,虚脱により脈拍と血圧の低下傾向が認められた. 以上の結果は,第46回日本麻酔学会総会で中間報告した.
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