日本における原発性肺胞蛋白症患者の肺胞洗浄液および血清中に、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に対する中和自己抗体が存在し、またGM-CSFノックアウトマウスが肺胞蛋白症様の病態を示すことから、この中和抗体が本疾患の原因である可能性が強いことを既に報告していた。本研究では、日本を含む5カ国、計24名の原発性肺胞蛋白症患者の血清を調べ、全ての患者血清中にこの中和抗体が存在することを明らかにした。人権を超えて、原発性肺胞蛋白症患者の血清中にこの中和抗体が存在するという事実は、この中和抗体が本疾患の原因であることを強く示唆するものである。次に、GM-CSFをカップリングさせたラテックスビースを作成し、このビーズを用いた抗GM-CSF自己抗体のアフィニティー精製を行った。精製された自己抗体のイディオタイプはIgGであり、サブグラスはIgG_1およびIgG_2であり、この自己抗体がモノクローナル抗体でないことが明らかにされた。さらに、このラテックスビースを用いた原発性肺胞蛋白症の血清診断の可否を明らかにするため、原発性肺胞蛋白症患者、その他の肺疾患患者、および健康人、計110人の血清によるラテックス擬集反応を調べた。結果は感度100%、特異度98%で、原発性肺胞蛋白症の血清診断法を開発することができた。従来の肺胞蛋白症の確定診断法は、肺胞洗浄液の生化学検査や、肺組織の病理検査であり患者にとって侵襲の大きいものであった。本研究で開発した血清診断法は、それらに比べはるかに侵襲の少ないものであり、診断手技に伴う患者のリスクを軽減でき得るものである。今後は、抗GM-CSF自己抗体のエピトープを決定し、どのようなメカニズムでこの自己抗体が発現するのかを明らかにしていく。今後の本研究の展望として、原発性肺胞蛋白症の新たな治療方法が確立に寄与しうると考えている。
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