本年度は肺水腫時のリチウム希釈法による心拍出量の精度の検討を行った。リチウム希釈法において中心または末梢静脈に投与されたリチウムイオンは肺循環を通って心臓に戻り全身へ送られ、末梢動脈でリチウムセンサーにその濃度変化を測定されるが、この方法では肺という臓器は単にリチウムイオンの混合部位であり、ここでのイオンのロスのないことを前提としているため肺水腫のような肺の透過性の変化がある病態でも肺でイオンのロスがなく正確に測定できるか検討されるべき課題であった。 方法:実験はブタを用いた。肺動脈カテーテルの中心静脈ルーメンより塩化リチウムを投与し、同時にリチウムセンサーを2セット準備し、肺動脈ルーメン(肺循環前)および末梢動脈(肺循環後)の2箇所から血液を吸引し濃度曲線を描き、心拍出量を測定した。コントロールの測定後、オレイン酸を中心静脈より投与し、肺水腫モデル作成後、同様の測定を行った。 結果:コントロールでは2箇所でのリチウム希釈曲線、心拍出量の値に有意な差を認めないが、肺水腫モデルにおいて、現在までの結果では肺を通過した後の測定において心拍出量の値がやや大きい傾向を示し、リチウムイオンの肺におけるロスが肺水腫のような病態でおこりうる可能性も出てきた。これが確実であれば、このような病態において末梢動脈におけるリチウムイオン濃度測定による心拍出量の測定ではその精度において注意を要すると言え、またこの差の測定により肺の水分量の測定等に応用が可能であるが、現在さらに症例を重ね検討中である。
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