研究概要 |
血管内皮細胞はエンドセリンに代表される収縮因子やEDRF,EDHFなどの拡張因子を放出し血管平滑筋の筋緊張を調節して血液灌流の自動調節に貢献している。麻酔薬はこうした自動調節能を障害することが知られており、麻酔による循環障害ひいては臓器障害の一因とされているが、その分子機序はほとんど知られていない。ハロセン、セボフルレンなどの揮発性麻酔薬はEDHFの作用を阻害する。麻酔薬の循環系に対する分子作用の解明の一ステップとして、我々はEDHFに関与するイオンチャネルに対する揮発性麻酔薬の影響を調べた。 EDHFの作用には特異的ブロッカーによる研究の結果Ca依存性Kチャネルが関与していることが知られている。最近クローニングされたこのグループのチャネルのうちEDHFの阻害効果と一致するチャネルはSK1,SK2,SK3及びIKである。これらのチャネルをアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させてパッチクランプ法によりK電流を測定し代表的揮発性麻酔薬であるハロセン、セボフルレン、イソフルレン、エンフルレンに対する感受性を調べた。SKI-3は3mMに至るまで全く感受性を示さなかったのに対してIKはIC50値それぞれ1.3、1.1、0.75、0.82mMで顕著にKカレントを抑制した。ハロセンのIKに対する抑制効果はCa濃度を上げても変化しなかったためCa感受性部位とは異なる部位での抑制と考えられた。さらにIKの分子内麻酔薬感受性部位を同定するためSK1およびIKのあいだでキメラを作成し現在検索中である。
|