研究概要 |
【はじめに】リチウムが脊髄神経細胞内の inositol を枯渇させ、neuronal plasticity に強く関与しているとされるイノシトールリン脂質系セカンドメッセンジャーの産生を減少させることにより、神経因性疼痛を抑制するという仮説をたて神経痛モデルラットにて検証した。 【方法および結果】雄性SDラット(8週令、250g)を使用しポリエチレンカテーテルを髄腔内へ挿入する。1週間後,四肢麻痺の無いことを確認した後,Benettらの方法に従い,右坐骨神経を絞扼し,神経痛モデル(CCIモデル)ラットを作成した。留置カテーテルより薬液を注入し,その疼痛行動に与える影響を調査した。疼痛行動の評価には、Heat hyperalgesia,Mechanical allodynia,Cold allodynia,Mecahnical hyperalgesiaの4項目について行った。 実験1(リチウム疼痛行動に与える影響) 髄腔内に生食,リチウム溶液を投与し,薬液注入前,注入後で両側後肢の熱および機械刺激による疼痛反応を評価した。 リチウムはHeat hyperalgesia,Mechanical,allodynia,Cold allodyniaの疼通行動を有意に抑制した。 実験2(リチウムの効果に対するイノシトールの拮抗作用) 髄腔内に投与する薬液により4群にわけ,生理食塩水群,イノシトール単独群,リチウム単独群,イノシトールとリチウム同時投与群での疼痛行動を比較した。リチウムの単独投与により疼通行動は減弱したものの,イノシトールとの同時投与により効果は有意に拮抗された。 【まとめ】神経痛モデルラットにおいて,リチウムの髄腔内投与は,ラットの疼痛行動を抑制し,神経損傷後の疼通に対する有効性が示唆された。このリチウムの疼通行動抑制作用はイノシトールリン脂質系への作用が重要であると考えられた。
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