研究目的は、モノクロタリン誘発性肺高血圧における血管病態を解明することである。 モノクロタリンによる肺高血圧の機序として、血管拡張作用の減弱が起こっていることが予測されるため、作用機序の異なる血管拡張作用をもつ新しい心筋梗塞治療薬であるJTV-519やNa^+/Ca^<2+>交換機構阻害薬のKB-R7943の肺血管拡張作用の変化を検討することにした。 雄性ウイスターラットにモノクロタリンを皮下注し、3週間後に肺高血圧を発症しているのを確認した。そのモノクロタリン誘発性肺高血圧ラットの肺動脈を取り出し、2〜3mmの血管リングを作製した。マイクロイージーマグヌスを用い、酸素95%二酸化炭素5%で通気したKrebs-Henseleit液中で最適の静止張力を与え定常状態をえた。ノルエピネフリンで収縮させた肺動脈リングに、新しい心筋梗塞治療薬であるJTV-519を段階的に投与し容量反応曲線を描き、NOS阻害薬やGlibenclamideの前投与の影響も調べた。またNa^+/Ca^<2+>交換機構阻害薬KB-R7943も段階的に投与し容量反応曲線を描いた。結果は、JTV-519はコントロール群で容量依存性に血管拡張を示した。その拡張作用はNOS阻害薬やGlibenclamideに影響されなかった。またモノクロタリン群ではコントロール群に比べ拡張作用が抑制された。またKB-R7943は肺血管拡張作用を示さなかった。 これらの実験結果より、モノクロタリンはJTV-519の肺血管拡張作用の感受性を変化させることがわかった。JTV-519の血管拡張の機序は、NOやATP感受性カリウムチャンネルの可能性は低くその他の機序が考えられた。また肺血管のトーヌスの調節にはNa^+/Ca^<2+>交換機構は関与していないことが示唆された。
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