本研究の研究目的は、ほ乳類の神経細胞由来のバックグラウンドカリウムチャンネルにおいて、全身麻酔薬の影響を確認して、最終的にはそのカリウムチャンネルを単離することである。 本年度の実施計画に記したように、まずマウス全脳組織から逆転写酵素を用いて作成したcDNAライブラリーを約100のライブラリーに分割した。次に、雌のアフリカツメガエルから、健康な卵母細胞を分離し、先に作成したcDNAライブラリーから作成したmessengerRNAを卵母細胞へmicroinjectionして、卵母細胞への発現を試みた。3日後にチャンネル蛋白が発現したかどうかを自作perufusion systemに連結したchamberに卵母細胞をセットし生理食塩水還流下にボルテージクランプを用いて確認した。何らかのチャンネルの発現が約60%の卵母細胞に認められたが、臨床的濃度に相当するハロセンまたはペントバルビタール含有生理食塩水を用いて還流を行ないボルテージクランプをおこなった結果、有意な透過電流の増大をみた卵母細胞を含むライブラリーは残念ながら見つからなかった。そこで、パッチクランプの研究において、海馬において吸入麻酔薬にsensitiveなカリウムチャンネルが電気生理学的に認められていることから、現在マウスの海馬からcDNAライブラリーを再度作成しなおし、同様にライブラリーの分割をおこない、アフリカツメガエルの卵母細胞にチャンネル蛋白を発現させてボルテージクランプ法を用いて検討を加えているところである。
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