研究概要 |
[研究方法]研究計画書通りに、同意を得た全身麻酔を受ける予定の健康な被験者を3群に分け、各群の患者は、全身麻酔導入後、笑気、イソフルレン、キセノンで維持した。各々のMACがグループ間で等しくなるように濃度を調整した。測定は、麻酔導入前と導入後約20分の執刀直前の2点で、心拍変動解析するために安静時の心拍数を5分程度測定し、また、圧受容体の感受性を調べるために、ニカルジピンおよびフェニレフリン静注による血圧および心拍数の変化も記録しオフラインで解析した。心拍変動のパワースペクトラムは、高速フーリエ解析にて計算し、低周波成分(LF:0.04-0.15Hz)および高周波成分(HF:0.15-0.40Hz)で比較をした。フェニレフリン(昇圧テスト)またはニカルジピン(降圧テスト)によって上昇または下降した血圧に対する心電図のR-R間隔変化の回帰直線を求め、その傾きを圧受容体の感受性とした。 [結果]すべての麻酔薬で、LF、HFともにパワースペクトラム密度は麻酔前に比べて減少した。群間比較では、キセノン群では、イソフルレン群より、LF、HFは有意に低下していた(LF:0.09±0.06vs.0.35±0.53;ρ<0.05,HF:0.40±0.34vs.0.98±0.68;ρ<0.01,単位はms^2.Hz^<-1>)。また、キセノンでは昇圧テストでの圧受容体感受性が他の2薬に比べて有意に低下していた(X:2.00±0.87,I:3.53±2.14,N:3.78±2.17,ρ<0.05 単位はms.mmhg^<-1>)。 [考察と今後の課題]これらの結果からいえることは、検証した3薬剤ともに、心拍変動および圧受容体感受性の強力な抑制作用があることがわかる。さらに、イソフルレンと比べて、キセノンは比較的副交感神経活動を維持し、交感神経活動を抑制していると推測しても矛盾がない。ただし、これらを証明するにはさらに直接的な証拠の検証が必要となる。これには、臨床または動物実験において、薬物的または物理的選択的な自律神経遮断下における薬剤の影響を調べることによりさらなる情報が得られると考える。これを来年度の課題としたい。
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