日帰り手術の麻酔に好んで用いられる静脈麻酔薬プロポフォール(以下pro)と吸入麻酔薬セボフルラン(以下sev)を併用した場合の麻酔効果について、ラットを用い検討した。300-350gのSDラットにsevを吸入させて麻酔後、気管内挿管をして小動物用ベンチレータに接続し、人工呼吸下に体温、血圧、心拍数、終末呼気二酸化炭素分圧、吸気並びに呼気sev濃度をモニタした。呼気sev濃度を0.2%ずつ変化させながら、尾を鉗子で摘んで痛み刺激を1分間加えた時の体動の有無を調べ、体動が消失する最小濃度と体動が生ずる最大濃度の平均から、sevの最小肺胞内濃度(MAC)を求めた。次いで大腿静脈からproを60分間以上持続注入した後に再度sevのMACを測定した。その結果、sevのMACはpro投与前2.1±0.3%(n=18)から、pro10mg/kg/時投与時1.7±0.2%(n=4)、pro20mg/kg/時投与時1.3±0.3%(n=4)へと、用量依存性に低下した。体動を生じた各sev濃度において、尾を鉗子で摘む直前の平均動脈圧と終末呼気二酸化炭素分圧は、96±7mmHg、35±4mmHg(pro投与前)、109±8mmHg、37±4mmHg(pro10mg/kg/時投与)、120±14mmHg、34±3mmHg(pro20mg/kg/時投与)で、MAC測定時の平均動脈圧値並びに終末呼気二酸化炭素分圧値に有意差は認められなかった。以上の結果から、プロポフォールにはセボフルランのMACを低下させる作用があることが示唆された。プロポフォールが脊髄レベルでセボフルランの麻酔作用を増強しているかについて、頚髄離断ラットで実験を重ねているところである。
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