生後8週齢のWistar系成熟雌ラットを用いた。膀胱頚部を結紮して、膀胱内圧と外尿道括約筋部尿道内圧をモニターしながら等容量性膀胱収縮を起こしたところ、神経無傷ラットでは膀胱の収縮に伴って、尿道内圧は一過性に低下し、高頻度の収縮を起こす、排尿筋と括約筋の協調活動が認められた。一方、ウレタン麻酔下に胸髄レベルを切断した脊髄損傷(脊損)ラットでは、脊損4週後に全例で膀胱の収縮に伴って外尿道括約筋が持続的に収縮する排尿筋括約筋協調不全(DSD)を呈した。 脊損後に膀胱平滑筋でのNGF産生量が増加することは文献的に明らかである。神経成長因子が脊損後の中枢神経内での神経回路の再構築に関与していることを明らかにするために、脊損後の脊髄排尿関連レベルでの神経成長因子受容体分布の経時的変化を調べた。ラットの脊損後24時間、1、2、4週後および神経無傷群の第5腰髄から第2仙髄を抗trkA、trkB抗体を用いて免疫染色を行った。 trkAは、神経無傷群では灰白質より白質に多く分布しており、脊損24時間、1週後では分布に変化なく、2週後にpyramidal tractに分布の増加を認めた。4週後でも神経無傷群に比べて同部位での分布の増加を認めたが、2週後より減少していた。TrkBも、神経無傷群では白質に多く分布していた。脊損2週後にpyramidal tractに分布の増加を認めたが、trkAより、その変動は少なかった。 以上の結果より、神経成長因子が中枢神経内で、排尿反射に関与する神経系の脊損後の神経系統の再構築に関与していると考えられた。
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