研究概要 |
アンドロゲン除去療法に変わる前立腺癌に対する治療法として,分化誘導療法の有用性を調べるため分化誘導剤であるPhenylacetate(PA)を用い、PAが前立腺癌細胞株に及ぼす影響を、細胞周期関連タンパク,特にp27Kip1,p21Cip1の発現、およびそれらによる細胞周期進行抑制のメカニズムを明らかにすることを目的に研究をすすめ、以下の結果を得た。 1)アンドロゲン依存性前立腺癌細胞株LNCaPを用い,PAが細胞増殖,細胞周期分布に及ぼす影響をFACSにて解析したところ、PAにて細胞増殖抑制効果(IC50:5mM)がみられ、G1期にある細胞の比率が増加し、S期の比率が減少した。 2)1)の結果をうらずけるため、Rb蛋白のリン酸化およびCDK活性の変化を調べたところ、PAによりRb蛋白のリン酸化および、CDK2活性が抑制されたが、CDK4活性に変化は見られなかった。 3)PAによる細胞周期関連蛋白の発現の変化をWestern blotにて検討したところ,p27Kip1の発現は増加したが、p21Cip1,cyclinD1およびcyclin Eの発現に変化は見られなかった。 4)免疫沈降にてp27Kip1とCDK2の結合を調べたところ、PAにて両者の結合が増加した。p21Cip1とCDK2の結合に関しては、PAによりむしろ減少した。 p27Kip1のantisense oligoを用いてPAの効果を調べたところ、PAによる細胞増殖抑制効果は消失し、p27Kip1とCDK2の結合の増加および、CDK2活性の抑制もみられなくなった。 今後、アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株に関しても同様の効果が認められるか検討する予定である。
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