1)XPAマウス精巣病変を詳細に解明するために、精細管の直径の測定、精細管内に見られる精子形成細胞の分布の調査を行った。精細管の直径を測定したところ、対照群に比べ3、6ヶ月令XPAマウスでは若干の減少が見られたが、12ヶ月令のそれは1/3に減少し、24ヶ月令では1/2以下であった。このことから、XPAマウス精巣は加齢とともに萎縮していた。さらに、精細管内部に見られる精子形成細胞を調べたところ、個体によって程度の差があるにせよ、24ヶ月令XPAマウス精巣は、空の精細管、セルトリ細胞のみが残存する精細管、セルトリ細胞及び精粗細胞のみが残存する精細管が大部分を占めており、正常な精子形成が行われていなかった。一方、野性型マウス精巣では、ほとんど上記のような精細管は見られなかった。以上のことから、対照群マウスに比べXPAマウス精巣は加齢によって老化が促進されている状態であり、種々の精子形成過程の細胞で細胞死及び変性をおこしている可能性があると考えられていた。現在XPAマウス精巣でのアポトーシスの検索、XPAマウスにおける人工的停留精巣作成及びX線照射実験は進行中である。次年度は、XPA遺伝子の精巣での発現、及び生後から3ヶ月令までのXPAマウス精巣の病理学的検索を行う予定である。 2)これまでのA群XP患者の剖検報告では、性腺発育不全の記述は見られるが、患者での病理学的検索、特に性腺での所見が乏しかった。また、年令ごとの患者による精巣所見の変化等の検討も行われてこなかった。そこでA群XP患者における精巣病変を明らかにするために、現在年令の違うヒトA群XP患者における精巣病変の比較とその患者剖検例におけるXPA遺伝子の遺伝子診断を行っている。これより、年令ごとのA群XP患者における精巣病変の変化が明らかになるであろう。これらを基にして、XPの精巣病変モデルとしてのXPAマウスの可能性を探る。
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