前立腺癌のホルモン不応性能の獲得機序を臨床病理学的および分子生物学的に解明することを目的とし、1994年7月より島根医科大学附属病院泌尿器科において、前立腺癌で内分泌療法を行った32症例(stageB:10例、C:7例、D:16例)を対象に、4カ月ごとに経直腸的超音波ガイド下のsystematic biopsyを施行した。まず、前立腺癌取り扱い規約に準じて原発巣の病理組織学的効果判定を行い、血清PSA値を中心とした臨床経過との関連について検討した。結果は血清PSA値の低下と病理組織学的変化との関係では、内分泌療法後に血清PSA値が陰性化した8症例中、病理学的効果判定でgrade2が1例、grade3が7例で、血清PSA値の最低値が4ng/ml以上の5症例中、grade0bが4例、grade1が1例であった。また病理学的変化の時間的推移では、grade3が持続した症例は10例で、そのうち1例のみに血清PSA値の上昇と骨転移の進行がみられた。効果判定でgrade3からgrade0bへ変化した3症例とgrede0b〜1で推移した6症例に再燃がみられ、血清PSA値の最低値が4ng/ml以上の症例では、原発巣の病理学的効果が低いことが示唆された。現在、経時的に得られた生検検体を用いてホルマリン固定パラフィン包理切片を作製し、PSA、AR、bcl-2、Ki-67、E-cadherin、apoptosisに対する抗体を使用して免疫組織染色を順次行い、経時的な病理学的変化を定量的に解析中である。
|