外傷を受けた片側精巣と反対側精巣の両者の形態変化の場をヘマトキシリン-エオジン染色にて経時的に観察するとリンパ球浸潤は外傷側精巣にはほとんど見られないことがわかった。外傷側の精細管は消失し成熟ライデッヒ細胞も認められず、カルシウム沈着と線維芽様細胞の増殖で占められ精子肉芽腫の発症もなかった。それに比し反対側精巣は外傷処置後4週以降に軽度リンパ球浸潤が直精細管周囲に認められた。しかし浸潤程度は精巣細胞感作の精巣炎モデルよりも遥かに軽度であり、組織像はリンパ球浸潤よりも精子形成障害のほうが顕著であることがわかった。免疫組織学的に浸潤白血球の分画を調べるとCD4T細胞、CD8T細胞、B細胞、マクロファージなどが混在していることがわかった。また免疫組織学的に炎症細胞から分泌されているサイトカインを調べるとIFN-rが陽性であることがわかった。血清テストステロンは特にコントロール群と比べて有意に低下はしていないので反射側精巣のライデッヒ細胞は障害をうけておらず寧ろ外傷側で消失したライデッヒ細胞機能を代償していることが推察された。今後は反射側精巣へのリンパ球浸潤と造精障害が自己免疫性のものかどうか調べるために精巣に外傷を受けたマウスのリンパ節細胞および脾細胞を健常マウスに全身または局所投与しレシピエント精巣の組織反応を観察する予定である。
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